- 1月 16, 2026
- 1月 12, 2026
【院長論文紹介】COVID-19重症化の鍵を握る「免疫のブレーキ」とは?最新論文のご紹介|津かわもと救急・内科クリニック

こんにちは。津かわもと救急・内科クリニック院長の川本です。
当院では「救急」と「内科」の両面から、地域のみなさまの健康を守るための診療を行っております。本日は、私が三重大学医学部附属病院麻酔科・集中治療部・分子病態学のチームと共に発表した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最新の研究論文についてご紹介します。
少し専門的な内容も含まれますが、私たちのクリニックで行っている「より確かな診断」の裏付けとなる研究ですので、ぜひお読みください。
1. 研究の内容:血液で見つける「重症化の予兆」
今回の研究では、重症のCOVID-19患者さんの血液中に含まれる「sPD-L1(可溶性PD-L1)」という物質の動きを詳しく分析しました。
「PD-L1」という言葉は、がん治療(免疫チェックポイント阻害薬)の分野で有名ですが、実は体内の免疫反応にブレーキをかける役割を持っています。
- 研究のポイント:
- 重症患者さんの多くは入院後にこの数値が下がっていきますが、亡くなってしまう患者さんでは数値が高いまま推移することが分かりました。
- 特に入院から7日目の数値が、その後の生存率を予測する強力な指標(リスクマーカー)になることを突き止めました。
- さらに補完的にAI(機械学習)を用いることで、従来の血液検査よりも高い精度で重症化リスクを判定できる可能性を示しました。
2. なぜこの研究が患者さんに役立つのか?
当院にも、発熱や咳などCOVID-19の症状で来院される患者様が多くいらっしゃるだろうと予想しています。この研究成果は、日々の診療において以下のような形で役立てられると考えます。
- 「適切なタイミング」での判断:
COVID-19は「最初は軽症でも、数日後に急変する」という怖さがあります。今回の研究で「入院1週間後の血液の状態」が重要であることが明確になったため、どのタイミングで高度な医療機関へ繋ぐべきか、より精度の高い判断が可能になります。
- 「免疫の麻痺」を見逃さない:
研究では、数値が高いままの患者さんは「免疫が麻痺(免疫抑制)」の状態にあることが示唆されました。これにより、単なる炎症を抑える治療だけでなく、患者さん一人ひとりの免疫状態に合わせた「オーダーメイドな治療方針」を検討する材料になります。
- 救急専門医としての「先読み」:
私は救急・麻酔・集中治療の専門医として、これまで多くの重症患者さんを診てきました。研究で得られた科学的根拠(エビデンス)に基づき、目の前の患者様が「本当に今、安全なのか」「今後悪化するリスクはないか」を、専門家の視点で厳しくチェックしています。
3. 地域の皆さまへ
COVID-19は決して過去の病気ではありません。しかし、研究が進むにつれて、私たちはより賢く、より安全に対処できるようになっています。
「ただの風邪かな?」と迷ったときこそ、科学的な視点と救急現場の経験を併せ持つ当院へご相談ください。最新の知見を、目の前の患者様の安心に変えていく。それが私たちの使命です。
【論文情報】
- タイトル:Exploratory characterization of dynamic soluble programmed death-ligand 1 trajectories and their association with mortality in critical coronavirus disease 2019
- 掲載誌:Journal of Intensive Care (2026)
- 著者:Takeuchi S, Kawamoto E, Matsusaki T, et al.