- 1月 4, 2026
- 12月 28, 2025
【胸の痛みと心電図検査】胸の痛みがあったら。心筋梗塞・狭心症を見逃さないための診断ポイント|津かわもと救急・内科クリニック

今年もよろしくお願いいたします。三重県津市の津かわもと救急・内科クリニックです。
お正月に私が診る疾患で多いのが胸痛の患者さんです。
「胸が痛い」「胸が苦しい」「動くと胸が締めつけられる感じがする」
このような胸の痛み(胸痛)は、当院の救急・内科診療でも非常によく遭遇する症状です。
胸痛の原因はさまざまです。筋肉痛や逆流性食道炎のようなものから、心筋梗塞・狭心症といった一刻を争う命に関わる病気まで幅広く存在します。
だからこそ、私たちは「心電図が正常だから大丈夫」とは決して考えず、症状・心電図変化・背景疾患を論理的に組み合わせて評価することを重視しています。
今回は、救急医・集中治療医の視点から、「胸痛診療で何を見ているのか」を解説します。
「胸の痛み」には種類がある|問診で高める診断精度
胸痛を診る際、最初に重要なのは「症状の特徴」を丁寧に聞き取ることです。
胸痛に関しては、問診と心電図でおおよその疾患を想起できると考えて間違いないとおもいます。
特に以下の点は、その痛みが心臓由来(虚血性心疾患)かどうかを判断するうえで非常に重要です。
- 誘因:安静にしていても痛むか、動いたとき(労作時)に悪化するか
- 持続時間:痛みは一瞬(数秒)なのか、数分〜数十分以上続くのか
- 随伴症状:冷や汗・吐き気・息切れを伴っていないか
これらは、急性冠症候群(心筋梗塞・不安定狭心症)の診断において世界的に用いられている評価基準です。
ACC/AHA(米国心臓病学会)やESC(欧州心臓病学会)のガイドラインでも、こうした症状評価の重要性が明記されており、当院でもこの国際標準に基づいた問診を行います。
心電図検査で何を見ているのか|12誘導心電図の意味
心電図は、心臓の電気活動を波形として記録する検査です。余談ですが、私が心電図を好きなのは数学のベクトルと非常に深い関係があるためです。
当院では12誘導心電図を用いて、心臓を「立体的に」評価します。心臓のどの位置で異常が起きているかを、電気のベクトル(方向と大きさ)から読み解きます。
- V1・V2誘導:心室中隔や右室寄りの変化
- I・aVL・V5・V6誘導:左室側壁の変化
- II・III・aVF誘導:心臓の下壁の変化
どの誘導に異常が出ているかを確認することで、心筋虚血(血流不足)や心筋梗塞が起きている血管や部位を推測します。
見逃してはいけないST変化|心筋梗塞・狭心症の重要サイン
心電図波形の中で、特に私たちが注視するのがST部分の変化です。
- ST上昇
- 冠動脈が急激に詰まるST上昇型心筋梗塞(STEMI)を強く疑います。
- 一刻も早いカテーテル治療などの対応が必要になる緊急事態です。
- ST低下
- 血流が不十分な狭心症や、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の可能性があります。
これらの評価は、日本循環器学会「急性冠症候群ガイドライン」およびESC/ACCガイドラインに基づいた医学的根拠のあるものです。
これらのサインがあれば、即日循環器専門医の診察が必要なため、関連病院へ紹介させていただきます。
心電図が「正常」に見えても安心できない理由
医学において「検査結果が正常=病気がない」とは限りません。残念ながら心電図も万能ではないのです。
例えば、心臓の裏側(後壁)で起きる心筋梗塞の場合、通常の前胸部誘導(V1〜V3)ではST上昇としては現れず、逆にST低下(鏡像変化:ミラーイメージ)として現れることがあります。
これは心電図を「波形」としてただ見るだけでは見落とされやすいポイントであり、心臓の立体構造を理解している医師による判読が必要です。
また、以下のような微細なサインも見逃しません。
- T波のわずかな変化
- 以前の健診等の心電図との比較
- 「検査は正常だが、症状が典型的である」という臨床的な違和感
こうした所見を総合的に判断し、「隠れた重症疾患」を拾い上げることが、Physician-Scientist(臨床研究医)としての私の役割だと考えています。
私が研修医のときに最初に見落とした心電図異常はT波の僅かな変化でした。
動悸・不整脈も心電図評価が重要
「脈が飛ぶ」「ドキッとする」といった動悸の多くは期外収縮と呼ばれるものですが、中には注意が必要なものも隠れています。
- 心房細動:心臓内に血栓ができやすく、脳梗塞のリスクとなります。
- 持続性の頻脈性不整脈:治療を要する頻脈です。
当院では、必要に応じてホルター心電図(24時間心電図)を行い、治療介入が必要か、経過観察でよいかを医学的根拠に基づいて判断します。
津市で胸の違和感・痛みを感じたらご相談ください
胸の痛みは、逆流性食道炎や肋間神経痛などが原因のこともありますが、心筋梗塞・狭心症などの重大な病気の初期サインである場合も少なくありません。そして、若年者では気胸のこともあります。(気胸、肺炎などについてはまた後日説明します。)
- 「なんとなく胸が苦しい」
- 「階段を登ると胸が痛む」
- 「以前と違う違和感がある」
そのようなときは、我慢せずにご相談ください。
津かわもと救急・内科クリニックでは、救急医療と集中治療の現場で培った経験と、最新のガイドラインに基づいた視点で、心電図と症状を総合的に評価します。