- 2026年10月9日
転んだあと、胸が痛い。肋骨骨折を疑う症状
「転んで胸をぶつけた」「咳をすると胸が痛む」「息を吸うと痛みが響く」
このような症状があるときは、打撲だけでなく肋骨骨折の可能性があります。胸のけがでは、骨折の有無よりも、肺や周囲の臓器に損傷がないか、十分に呼吸ができているかを確認することが大切です[1]。
こんな症状があれば、肋骨骨折を疑います
肋骨は胸を囲み、肺などの臓器を守る骨です。転倒や胸への衝撃で折れるほか、強い咳が続いて折れることもあります。
- 息を吸うと、胸の特定の場所が痛む
- 咳やくしゃみで痛みが強くなる
- 胸の一部を押すと痛む
- 痛む場所に腫れや青あざがある
ただし、症状だけで骨折と打撲を区別することはできません。青あざが出ない骨折もあります[2]。
息苦しさや、悪化する痛みには注意してください
胸を強く打つと、肺の周囲に空気がたまる「気胸」、血液がたまる「血胸」、肺そのものが傷つく「肺挫傷」を伴うことがあります。下の方の肋骨のけがでは、肝臓や脾臓などお腹の臓器が傷ついていることもあります[1]。
次の症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください[2]。
- 息苦しさが出てきた、または強くなっている
- 胸の痛みが次第に悪化している
- 血の混じった痰が出る
- 胸だけでなく、お腹や肩にも痛みがある
交通事故や高い所からの転落など、強い衝撃を受けた場合も救急での評価が必要です。強い息苦しさがあるときは119番に連絡してください。
65歳以上の方は、軽い転倒でも早めの受診を
肋骨骨折は、年齢が高いほど肺炎などの合併症が起こりやすくなります。入院した患者さんを対象とした米国の研究では、65歳以上の方は若い方に比べて肺炎や死亡の割合が高く、折れた肋骨が1本増えるごとに肺炎のリスクが27%、死亡のリスクが19%高くなりました[3]。
これは入院が必要だった方のデータであり、外来で治療できる軽いけがにそのまま当てはまるわけではありません。それでも、ご高齢の方や肺・心臓に持病のある方は、「ただの打ち身」と自己判断せずに受診することをおすすめします。
レントゲンで骨折が見えないこともあります
診察では、けがをした状況、痛む場所、呼吸の状態を確認し、必要に応じて画像検査を行います。
胸部レントゲンでは、肋骨骨折の約半数が写らないと報告されています[1]。「レントゲンに写っていない」という理由だけで、骨折を否定することはできません。
一方で、軽い外傷で合併症の疑いがない場合、骨折が写るかどうかで治療方針はほとんど変わりません。米国放射線学会の診療指針でも、このような場合は胸部レントゲンを最初の検査とし、肋骨専用の撮影やCTを全員に行う必要はないとしています[1]。検査の主な目的は、骨折を1本残らず見つけることではなく、気胸や血胸など治療が変わる合併症を見逃さないことです。
治療の中心は、痛みを抑えて呼吸を保つことです
合併症のない肋骨骨折の多くは、手術をせずに治ります。ただし、痛みを我慢するだけでは十分ではありません。
痛みが強いと、深く息を吸うことや、痰を出すための咳が難しくなり、肺炎につながるおそれがあります。そのため、鎮痛薬で痛みを抑え、呼吸と咳ができる状態を保つことが治療の中心になります[4][5]。
米国の外傷学会の指針は、医療用麻薬だけに頼らず、複数の鎮痛法を組み合わせることを提案しています。ただし、根拠となる研究の質は高くないとされており、治療は患者さんごとに調整します[4]。飲み薬で呼吸や体動が難しい場合は、入院や神経ブロックを検討します。
自宅では、無理を避けながら体を動かしましょう
自宅療養が可能と判断された場合は、次の点を意識してください[2][5]。
- 処方された鎮痛薬を、指示どおりに使う
- 痛みを強める運動や、重い物を持つ作業を控える
- 長時間横になったままにならず、無理のない範囲で歩く
- 1時間に一度を目安に、ゆっくり深呼吸をする
- 咳をするときは、枕や折りたたんだタオルで痛む場所をそっと支える
- たばこは控える
多くは2〜6週間ほどで痛みが軽くなりますが、経過には個人差があります[2][5]。発熱がある、色のついた痰が増えた、数週間たっても痛みが改善しない、といった場合は再度受診してください。
転倒後の胸の痛みが続くときや、痛くて十分に息を吸えないときは、津かわもと救急・内科クリニックへご相談ください。息苦しさや急速な症状の悪化がある場合は、救急受診を優先してください。
参考文献
- Henry TS, et al. ACR Appropriateness Criteria® Rib Fractures. J Am Coll Radiol. 2019;16(5S):S227–S234.
- NHS. Broken or bruised ribs(2024年1月改訂)
- Bulger EM, et al. Rib fractures in the elderly. J Trauma. 2000;48(6):1040–1046.
- Galvagno SM Jr, et al. Pain management for blunt thoracic trauma: EAST/TAS joint practice management guideline. J Trauma Acute Care Surg. 2016;81(5):936–951.
- The Rotherham NHS Foundation Trust. Broken or bruised ribs (chest wall injuries)