- 2026年10月22日
- 2026年10月9日
風邪のあと、咳だけ続くのはなぜ? 長引く咳と喘息の話
こんにちは。津かわもと救急・内科クリニックです。
「熱や鼻水は治ったのに、咳だけが残っている」 「夜になると咳が出て、よく眠れない」
このようなお悩みで受診される方は少なくありません。風邪のあとの咳は自然に治まることが多い一方で、咳喘息など治療が必要な病気が隠れていることもあります。今回は、長引く咳の原因と受診の目安を、国内外のガイドラインや研究をもとにお伝えします。
風邪のあと、気道が敏感になることがあります
風邪などの感染症が治まったあとも、空気の通り道である「気道」が敏感なまま残り、咳だけが続くことがあります。これを感染後咳嗽(かんせんごがいそう)と呼びます。
海外の報告では、呼吸器の感染症にかかった成人の11〜25%にみられ、多くは3〜8週間のうちに自然に治まるとされています(文献2)。決して珍しいものではなく、時間とともに軽くなっていくのが特徴です。
咳は、続いた期間によって次のように分けて考えます(文献1)。
| 続いた期間 | 呼び方 | 考え方 |
|---|---|---|
| 3週間未満 | 急性咳嗽 | 風邪などの感染症が中心 |
| 3〜8週間 | 遷延性咳嗽 | 感染後咳嗽が多いが、ほかの原因も増えてくる |
| 8週間以上 | 慢性咳嗽 | 感染症以外の原因が中心 |
つまり、風邪をきっかけに始まった咳が、すべて感染後咳嗽とは限りません。長引くほど感染症以外の原因が増えるため、ほかの病気がないか確認することが大切です。
「ゼーゼーしない喘息」もあります
喘息というと、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音や息苦しさを思い浮かべる方が多いと思います。
一方、こうした症状がなく、咳だけが続く「咳喘息」があります。国内の調査では、長引く咳で受診した方の原因として最も多く、約3割を占めていました(文献3)。
咳喘息には、次のような特徴があります(文献1)。
- 夜間から明け方に咳が出やすい
- 冷たい空気、会話、運動、季節の変わり目などで悪化しやすい
- 風邪をきっかけに始まることがある
- 気管支を広げる薬で咳が軽くなることが多い
咳喘息を治療せずにいると、約3割の方がゼーゼーを伴う典型的な喘息に移行すると報告されています。吸入ステロイド薬による治療は、この移行を減らすと考えられています(文献4)。
なお、喘息は子どもだけの病気ではなく、大人になってから発症することもあります。
長引く咳には、ほかの原因もあります
咳の原因は一つとは限りません。国内の調査では、長引く咳の約4割で複数の原因が重なっていました(文献3)。代表的なものをご紹介します。
- 鼻や副鼻腔の病気:鼻水がのどに落ちる「後鼻漏(こうびろう)」が、痰のからむ咳の原因になります(文献5)。
- 胃酸の逆流(胃食道逆流症):国内の調査では、長引く咳の約1割を占めていました(文献3)。胸やけがある、食後や横になったときに咳が出る、といった場合に疑います。
- お薬の影響:血圧の薬の一種(ACE阻害薬)では、服用している方の約15%に咳がみられます(文献6)。心当たりがあっても、自己判断で中止せずご相談ください。
- 百日咳:2025年は全国で大きく流行し、第21週までの報告数は22,351例と、2024年1年間(4,096例)の5倍を超えました。大人では軽症のことが多く、咳が長く続いても見過ごされやすいとされています(文献7)。
- 肺の病気:頻度は高くありませんが、結核、肺がん、間質性肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などが隠れていることがあります(文献5)。
そのため診察では、咳の続いた期間、痰の有無、咳が出やすい時間帯、服用中のお薬などをお伺いします。必要に応じて胸部エックス線などの検査を行い、原因を探していきます。
咳止めだけでは改善しにくい場合があります
咳止めは症状を一時的に和らげる薬で、原因そのものを治す薬ではありません。大切なのは、原因に合った治療を選ぶことです。
感染後咳嗽は自然に治まることが多く、吸入薬や飲み薬で治りが早まるという明確な根拠は示されていません(文献2)。経過をみることも選択肢の一つです。
一方、咳喘息や喘息では、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬(気管支を広げる薬との配合剤を含む)が治療の中心になります(文献1)。咳が治まっても、気道の炎症は残っていることがあります。
吸入薬が処方された場合は、使い方や続ける期間を確認し、自己判断で中止せずにご相談ください。
こんなときは、受診をご検討ください
咳が3週間以上続く場合は、原因を調べる目安です(文献1、5)。3週間に満たなくても、咳で眠れない、仕事や日常生活に支障がある場合は、我慢せずご相談ください。
次のような症状がある場合は、期間にかかわらず早めの受診が必要です(文献2)。
- 息苦しい、ゼーゼーする
- 発熱が続く
- 痰に血が混じる
- 体重が減ってきた、強いだるさがある
- 声がかれる、飲み込みにくい
- 喫煙歴が長い、肺炎を繰り返している
横になれないほど息苦しい、会話がつらいといった場合は、すぐに受診してください。
受診時には、次の点をお伝えいただくと診察の参考になります。
- いつから咳が出ているか
- 夜や朝に悪化するか
- 痰や発熱があるか
- 服用中のお薬(お薬手帳をお持ちください)
「風邪の名残だから」と決めつけず、長引く咳でお困りの際は、津かわもと救急・内科クリニックへご相談ください。
津かわもと救急・内科クリニック 院長 川本 英嗣
参考文献
- 日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版作成委員会 編.咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025.メディカルレビュー社,2025.
- Liang K, Hui P, Green S. Postinfectious cough in adults. CMAJ. 2024;196(5):E157.
- Kanemitsu Y, et al. Allergol Int. 2019;68(4):478-85.(慢性咳嗽 Library「疫学」より)
- Matsumoto H, et al. Prognosis of cough variant asthma: a retrospective analysis. J Asthma. 2006;43(2).
- 日本呼吸器学会 呼吸器Q&A.Q1 からせきが3週間以上続きます/Q2 せきとたんが3週間以上続きます
- Morice AH, et al. ERS guidelines on the diagnosis and treatment of chronic cough in adults and children. Eur Respir J. 2020;55(1):1901136.
- 国立健康危機管理研究機構.IDWR 2025年第22号 注目すべき感染症「百日咳」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療は、診察のうえで個別に判断します。