• 2026年8月11日

発展途上国へ渡航する前に ― 仕事・旅行・留学のためのワクチン相談

旅行者ワクチンは以下のURLをクリックしてご相談ください。24時間以内に担当医からメールでお返事します。

https://kawamoto-clinic.jp/vaccination.html

海外出張、赴任、卒業旅行、留学、ボランティア。渡航の目的はさまざまですが、東南アジア・南アジア・アフリカ・中南米といった地域へ向かう方に共通して必要なのが、出発前の感染症対策です。

海外渡航者の健康問題を集めた国際的なサーベイランス(GeoSentinel)では、途上国から帰国した旅行者の受診理由として、下痢症・発熱・皮膚疾患が三大原因を占めることが繰り返し報告されています。このうち少なからぬ部分が、あらかじめワクチンで防げる病気です。

当院では渡航ワクチン外来を開設して、渡航先・滞在期間・活動内容にあわせて接種計画を立てて一人ひとりに適切でオーダーメイドの最短のワクチン接種計画書をお渡ししています。

さらに、必要な方には英文の接種証明書までご用意しています。この記事では、渡航前に検討すべきワクチンと、当院で受けられるサービスをまとめます。

1. まず決まるのは「どこへ・どれくらい・何をしに」

渡航ワクチンに「全員共通の正解」はありません。判断の軸は次の3つです。

見るポイント
渡航先国だけでなく地域まで(都市部か農村部か)
滞在期間1週間の出張か、1年の赴任・留学か
活動内容ホテル中心か、屋外・森林・動物との接触があるか

同じインドでも、都市部のホテルに5日間滞在するビジネス出張と、農村で6か月活動する場合とでは、推奨されるワクチンはまったく異なります。当院ではまずここを丁寧に伺うところから始めます。

2. 途上国渡航で検討する主なワクチン

A型肝炎 ― 途上国渡航で最優先の一つ

汚染された水や食品から感染し、発熱・倦怠感・黄疸を起こします。若年者では軽症のことも多い一方、年齢が上がるほど重症化しやすいのが特徴です。日本では1970年代以降に生まれた世代のほとんどが抗体を持っておらず、途上国へ渡航する多くの成人が対象になります。

国産ワクチン(エイムゲン)は0・2〜4週・24週の計3回。2回接種した時点でおおむね良好な抗体が得られるため、出発まで4週間あれば2回は打てる設計です。3回目は帰国後で構いません。

破傷風 ― 「土がある場所」に行くすべての人へ

破傷風菌は世界中の土壌にいます。海外で転倒・擦過傷を負ったとき、医療体制の整わない地域では対応が遅れがちです。1968年以前生まれの方は定期接種を受けていない可能性が高く、また接種歴のある方も10年ごとの追加接種が推奨されます。当院では成人にはDTトキソイド、小児期からの追加が必要な場合は三種混合(トリビック)を用いています。

腸チフス ― 南アジア渡航では特に重要

チフス菌による全身性の熱性疾患で、南アジア(インド・ネパール・パキスタン・バングラデシュ等)のリスクが突出して高いことが知られています。近年は抗菌薬耐性菌も増え、治療が難渋する例があります。

これまで日本では未承認で輸入ワクチンに頼るしかありませんでしたが、2024年6月に国内初の腸チフスワクチン「タイフィムブイアイ」が承認され、2025年6月30日から国内で正式に接種できるようになりました。1回接種(出発の2週間以上前)で、リスクが続く場合は数年ごとの追加接種が推奨されます。

狂犬病 ― 発症すればほぼ100%死亡する病気

アジア・アフリカでは犬による咬傷が主な感染源です。発症後の有効な治療法はなく、致死率はほぼ100%。一方で、噛まれた後すぐに適切な処置を受ければ発症は防げます。

事前接種(曝露前接種)をしておく最大の利点は、現地で噛まれた後の対応が簡略化されることです。未接種者は狂犬病免疫グロブリン(日本国内では未承認、途上国では入手困難なことが多い)が必要になりますが、事前接種を済ませていればワクチン2回の追加のみで済みます。

ラビピュールを用い、0日・7日・21日(または28日)の計3回が標準です。WHOは条件によっては2回でも許容としていますが、日本国内では3回接種が推奨されています。接種計画に最低3週間かかるため、渡航が決まったら早めのご相談を。

日本脳炎 ― アジアの農村部・長期滞在で

東南アジア・南アジアの農村部、特に水田地帯での夏季の長期滞在ではリスクが高まります。日本国内の定期接種を完了している方は多くの場合追加不要ですが、1995〜2007年度生まれの方は「積極的勧奨の差し控え」により接種が不完全なケースが多く、母子健康手帳での確認が欠かせません。

B型肝炎 ― 医療従事者・長期滞在者・赴任者に

血液や体液を介して感染します。現地で医療行為を受ける可能性のある方、医療・介護に従事する方、長期赴任される方には推奨されます。0・1・6か月の3回接種で、完了までに約6か月かかります。

髄膜炎菌(ACWY) ― アフリカ髄膜炎ベルト、留学、巡礼

サハラ以南の「髄膜炎ベルト」地域への渡航、サウジアラビアへの巡礼(入国時に接種証明が必要)、および欧米の学生寮に入る留学生で推奨されます。日本ではメンクアッドフィなどが使用可能で、1回接種です。

麻疹・風疹、ポリオ ― 「足元」の確認を忘れずに

日本の麻疹は輸入例から広がります。渡航者本人を守るという意味でも、2回の接種歴が確認できない成人はMRワクチンの追加をご検討ください。ポリオについても、流行国(アフガニスタン・パキスタン等)や隣接地域への渡航では追加接種が推奨される場合があります。

3. 黄熱ワクチンだけは「検疫所」でのお手続きになります

黄熱ワクチンは国際証明書(いわゆるイエローカード)の発行を伴うため、国内では検疫所などの指定機関でのみ接種可能です。当院では接種できません。

東海地方では名古屋検疫所(052-661-4131)または中部空港検疫所支所(0569-38-8192)が窓口となり、いずれも完全予約制です。

ここで重要なのが接種順序です。黄熱は生ワクチンで、接種後は原則として一定期間、他の生ワクチンを接種できません。そのため、

黄熱の予定がある方は「他のワクチンを当院で先に」進めておくのが原則

となります。証明書は接種10日後から有効になる点にも注意が必要です。黄熱の接種が必要かどうかの判断、および当院での接種スケジュールとの調整も、外来でご相談を承ります。

4. ワクチンでは防げないもの ― 相談はここまで含めて

渡航前医療はワクチンだけでは完結しません。当院では以下についても併せてお話しします。

  • マラリア:予防内服の適応判断と処方の相談、蚊対策(防虫剤・蚊帳・長袖)
  • デング熱・チクングニア熱:ワクチンによる予防が難しく、日中の蚊対策が中心
  • 旅行者下痢症:最も頻度の高い健康問題。飲食物の選び方と、現地で下痢をしたときの対処・常備薬
  • 高山病:南米アンデス、ヒマラヤ方面への渡航時の予防と対応
  • 持病のある方:常用薬の英文処方内容書、海外旅行保険に関する助言

5. いつ受診すればよいか ― 「出発の2か月前」が目安

複数のワクチンを組み合わせると、完了まで1〜2か月かかることが珍しくありません。

出発までの期間できること
2か月以上ほぼすべてのワクチンを計画どおりに完了できます
1か月前後優先順位をつけ、重要なものから接種。A型肝炎2回・狂犬病3回は可能
2週間単回で効果が期待できるもの(腸チフス、髄膜炎菌、破傷風)を中心に
数日前接種できるものは限られますが、渡航先のリスク説明と携行薬の相談は可能です

出発が迫っていても、「もう遅い」ということはありません。まずはご相談ください。

6. 当院の渡航ワクチン外来でできること

津かわもと救急・内科クリニックでは、次のサービスを提供しています。

  • 渡航先・期間・活動内容に応じた接種プランの作成(母子健康手帳・接種歴の確認を含む)
  • 各種ワクチンの接種:A型肝炎、B型肝炎、破傷風(DT・三種混合)、腸チフス、狂犬病、日本脳炎、麻疹風疹(MR)、おたふくかぜ、水痘、髄膜炎菌ACWY、ポリオ ほか
  • 接種スケジュール表のお渡し:来院日・接種内容を一覧にした説明用紙をお渡しします
  • 英文の予防接種証明書の発行(留学・就労ビザ・企業提出用)
  • マラリア予防内服・常備薬のご相談
  • 黄熱ワクチンについてのご案内と、検疫所での接種を前提としたスケジュール調整
  • 帰国後の体調不良のご相談:発熱・下痢・皮疹など。当院はCT・血液検査を院内で行える体制です

日曜も診療しています。 平日にお時間の取れない方、出張前で予定が読みにくい方にもご利用いただけます。

ご予約・お問い合わせ

渡航ワクチンは自費診療です。ワクチンにより取り寄せが必要なものがあり、WEBでのご予約をお願いしています

その際、渡航先の国と地域・出発日・滞在期間・現地での活動内容をお知らせいただけますと、ワクチンの手配がスムーズです。母子健康手帳や過去の接種記録がお手元にあれば、以下のフォームからご入浴いただくか、受診時にご持参ください。

津かわもと救急・内科クリニック

〒514-0125 三重県津市大里窪田町字下沢2862-1

TEL 059-253-2119

↓ワクチンの予約は以下のURLをクリックしてください。

https://kawamoto-clinic.jp/vaccination.html

診療日:火・木・金・土・日(月曜・水曜 休診)

参考資料

  • 厚生労働省検疫所 FORTH「海外へ渡航される方へ」 https://www.forth.go.jp/
  • 厚生労働省検疫所「予防接種実施機関の探し方」 https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/vaccination.html
  • 名古屋検疫所「黄熱ワクチンを受けられる方」 https://www.forth.go.jp/keneki/nagoya/business/sanitation-division/yfvax2.html
  • WHO: Rabies vaccines — WHO position paper (2018), Weekly Epidemiological Record
  • CDC Yellow Book: Health Information for International Travel
  • サノフィ株式会社 プレスリリース「腸チフスワクチン『タイフィム ブイアイ注シリンジ』新発売」(2025年6月30日)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の接種の要否は診察のうえ判断いたします。

津かわもと救急・内科クリニック 059-253-2119 ホームページ